月別アーカイブ: 2011年1月

HIDE-AND-SEEK PIECE

ハンドメイド布バッグ屋 ::: shiroi mokuren の庭  :::

ふと思い出すことば。

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Hide until everybody goes home.
Hide until everybody forgets about you.
Hide until everybody dies.

HIDE-AND-SEEK PIECE (1964 spring) 

(Yoko Ono “grapefruit juice” より)

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(日本語訳)

隠れていなさい、

みんなが家に帰ってしまうまで。

隠れていなさい、

みんながあなたを忘れてしまうまで。

隠れていなさい、

みんなが死んでしまうまで。

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新作バッグ


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最近作ったバッグに使ったレースです。

淡いベージュ、オレンジ、パープル、そしてグレーがかった青色が

全体としてどことなく優しさを醸し出す風に編まれた、

あまり見ない感じのレース。

全ての糸をぴんとはった状態で編んでいるのではなく、

少しゆるませているところがあり、とても雰囲気があります。

生地やレースの仕入れに行くたびに、

いつもよいものに出会えるというわけではありません。

ぴんとくるものがないときは、無理には買わず

ぶらりと見て回るだけで手ぶらで帰ることも。

でも、あ!と立ち止まらせ、何か自分の中のセンサーに

響いてくるものと出会ったときには、迷わず購入します。

そういうものと出会ったときは、それ自体に存在感があるためか、

それが醸し出しているものから、おのずと「こういうバッグ…」

というイメージが浮かんでくることが多いです。

このレースを用いて作ったバッグも、そのようなものの一つ…。

表側の布は、黒のコットンリネン、

内布は、これまたぴんときて迷わずに購入した、

グレーがかった淡いパープルの美しいリネンを用いています。

この内布のリネンの風合い、

そして何とも言えないこの独特の色合い…。

ぜひお手にとって見て頂きたいバッグの一つです。

想像の余白

ハンドメイド布バッグ屋 ::: shiroi mokuren の庭  :::-人生の花 ハンドメイド布バッグ屋 ::: shiroi mokuren の庭  :::-人形つかい ハンドメイド布バッグ屋 ::: shiroi mokuren の庭  :::-蛍
私の好きな日本画家のひとりに、上村松園がいます。
昨年末、京都で上村松園展があり、行ってきました。
松園の絵はこれまで画集などで見たことがあるだけで、
生で見たことのあるものは、数点のみ…。
画集で見るだけでも、その圧倒的な空気感に魅了される松園の作品を、これだけまとまった形で見れるなんて!感激でした。
中でも、「虫の音」や「人形つかい」など、 実際には虫の音が聞こえてくるわけでもなく、 また虫が描かれているわけではないのに、 そこに虫がいて鳴いている声が聞こえてくるような作品や、 人形つかいはちょうどふすまに隠れていて見えないのに、 それを見ている女性や子供たちの表情を通して、 ふすまの向こうの人形つかいの様がありありと見えてくるような、 描かれていないのに、でも実際に描く以上にその情景が強く伝わってくるような作品が
いくつかありました。
このような作品につけられたタイトルは、もはや単なる状況説明的なタイトルではなく、 絵と共に作品の一部となっていて、とても生きています。
描かれた人物の表情、眼差し方やちょっとしたしぐさ、姿勢、ふるまい、タイトルなどから、 見ているものに描いていないものまで感じさせる…。
ことばの面白さの一つは、語っていないことまで語ることができる、そういうことばがある、というところにあると感じていますが、絵の魅力の一つは、描いていないものを描かれたものから、 どれだけ想像させたり、感じさせたりできるのか…というところにあるのかもしれません。
(画像:左から順に「人生の花」「人形つかい」「蛍」)

雪降りつむ

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2011年は、これまでにないくらいたくさん雪の降り積もる中、

迎えましたが、週末、今年に入って二度目の雪…!

またまたここまで積もるとは。

この冬は本当によく冷えます。

雪が降り積もると、普段の移動手段が

もっぱら自転車であることもあって

交通面ではやや不便になることもありますが、

雪が静かに降り積もる様や、その空気感、

まだ誰も足跡をつけていない、ふんわりとしたやわらかな雪の表情、

雪の上を踏みしめて歩く感触、そして何よりも

いつもの見慣れた風景が、いつもとは少し違って見える雪景色

は大好きです。

歩いていると、歩道の端っこに雪だるまがいたりもして…。

大阪に生まれ育ち、現在京都に住む私にとっては、

雪が降り積もることは、「非日常=ハレ」であって、

いくつになっても、やはり少し特別なもの、のようです。

言葉の強度

小学校を卒業する時、卒業文集の「将来の夢」の欄に「童話作家になりたい。」と書いていたほど、
幼い頃から、童話を読むのが好きでした。
小さい頃だけでなく高校生になっても、児童文学作品を好んで読んでいました。
「トムは真夜中の庭で」「思い出のマーニー」「床下の小人たち」シリーズ、「ハヤ号セイ川をいく 」…などなど。
大学に入ってからは、新しく出会う、これまで読んだことのなかった類の本も多く、そちらに傾倒して児童文学の世界からは少し遠ざかっていましたが、やはり好きなものはいくつになっても、好きなもの…。
日本の童話作家の中で好きな人の一人に、小川未明がいます。
昨年読んだ『小川未明童話集』(新潮文庫)には、有名な「赤いろうそくと人魚」を始め、「月夜と眼鏡」「しいの実」「眠い町」「飴チョコの天使」「千代紙の春」「金の輪」「小さい針の音」など全部で25話入っていて、そこに、これまでに読んだどの作家とも少し違う独特の世界、独特の空気を感じました。
言葉を尽くして語られているわけではなく、 どちらかというととてもシンプルで無駄のない言葉で語られているのに、 (いや、むしろそのような言葉で語られているから?) ある一つの情景が、それもある色とある空気を纏った情景が 目の前にくっきりとした輪郭を持ってぱんと広がるような、そんな話がたくさん。
起承転結のある、あるいは一つの明確なストーリーのある物語というよりは、 一つのイメージがただぽんと提示されているようなものや、 出来事の連鎖をたんたんと描いているようなもの、 大きな一つの流れのなかの断片だけを少し垣間見させ、かつその断片から大きな流れを想像させるようなもの…などがあり、とても魅力的です。
未明の作品を読んでいると、そぎ落とし、そぎ落としして最後に残るエッセンスのようなものの持つ力強さを感じます。
言葉が語っていないことまで語ってる、そんな言葉、とでも言えばよいのでしょうか…!
言葉は、単に何かを伝えるための「手段」や「道具」に過ぎないのではなく、それ自体、力を持ったもの、そしてそれ自体が何かを創りだし、動かしていくもの、であるように思います。