わたしのワンピース

保育園に通っていた頃、時々絵本の読み聞かせにやって来るおじさんがいた。
そのおじさんが読み聞かせてくれた絵本のなかで、今でもよく覚えているものがある。

それは確か、『わたしのワンピース』という絵本だった。
記憶では白いうさぎが主人公で、そのうさぎが真っ白な無地のワンピースを着て、お花畑や野原などに出かけるというものだ。

何より素敵なのは、その真っ白なワンピースが、それを着たうさぎが行く先々の風景の模様になるということ。

お花畑に立つと、そのワンピースがお花畑の模様のワンピースになる。
野原に立つと、そのワンピースが野原の模様のワンピースになるのだ。

身につけている洋服が、そんな風にまわりの風景に染まるなんて、なんだか自分自身がその風景の一部になったみたいで、幼心に、なんて素敵な…!と、胸がときめくような思いがしたものだった。

 

白い無地の生地が、いつまでもわたしにとって特別な生地であるのも、「白」という色に魅かれるものがあるのも、案外この物語の力によるものが大きいのかもしれない。

 

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