出会ったもの・こと」カテゴリーアーカイブ

小さな襟の物語

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可愛らしい葉や実の模様が手刺繍によって施されたアンティークの襟。
下のレースは、ひと針ひと針、手で縫い付けられています。

細やかで丁寧で、そして繊細な手仕事が生み出す、独特の存在感…。
さらにそれが”使われる”ということのなかで醸成されていく雰囲気が加わって、それは単なる”もの”であることを超えて、それを見る者、手にとった者に、ある情感を、心地よさをもたらすものに。

その心地よさは、この小さな襟から、作り手の想いやそれを使っていた人の想い、そしてそれを大切に取っておいた人の想いというものが、ひしひしと伝わってくることによってもたらされるもの…のような気がします。

 

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無農薬の…

2014 16.01.45

いただいた無農薬栽培のにんじん。
生きたにんじんの匂いがする!
農家の方から直接買ったものだそう。

そうそうにんじんってこんな匂いだった、と思った。
そのままぱくりと齧り付きたくなる、この匂い。

 

匂いだけではない。
どれ一つとして同じ形はない、それぞれに個性的なにんじんたち。

スーパーに並ぶにんじんには、こんな匂いはなく、
しかも、どれも同じようなまっすぐの形…。

 
 

身体に入れるものは、
できるだけ畑の匂いのするもの、土の匂いのするものがいい。

 
 
 

冬至を過ぎ…

昨日22日は冬至。
夜、いただいた柚子をお風呂に浮かべて柚子湯に。
柚子の香りに、心身ともにすっかりほぐされました。
古くからの言い伝えでは、この柚子の香りが魔除けの役割を果たすのだそうです。

そして……
冬至と言えば、かぼちゃやこんにゃく、小豆粥を食べるとよいなどと言われますが、京都では冬至に「ん」の字が二つ付くものを七つ食べるとよいと伝わるそうです。
「ん」の字の二つ付くものとは、
「なんきん(かぼちゃ)、にんじん、れんこん、ぎんなん、きんかん、かんてん、うんどん(うどん)」。
運、鈍、根にあやかって幸福になれるのだとか。

冬至を過ぎてここから日脚は伸びていきますが、実際、寒さは厳しくなり、本格的な冬はこれから…です。

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有線七宝との出会い

季節は移り変わり、すっかり冬の空気に。
この秋、並河靖之七宝記念館に足を運びました。

地下鉄の駅まで歩く道の途中にある、京都の伝統的な町家建築。
「並河靖之七宝記念館」という看板……。
大きな通りから一本北に入ったところにあるので、あまり目立たないし、観光客の方がよくいらっしゃるという風でもなく、実にひっそりと建っているのですが、趣のある立派な建築だし、「七宝記念館」とあるし、ずっと気になる存在でした。

けれど、季節によっては閉館している時期もあり、気になりながらも、近所なのに(近所であるがゆえに?)なかなか行くことができていなかったのですが、それがようやく実現しました。

 

今季は、「並河七宝と下画」と題した特別展が催されていて、並河氏の手になる、すばらしい有線七宝の作品とともに、それらの下画を拝見することができました。

下画の中で最も強く惹かれ心に残ったのは、季節の草花の下画。
わたし自身、草花が好きだということもあるのですが、それぞれの季節の木や草花の特徴、佇まい、雰囲気が実によく捉えられていて、どこまでも細やかで繊細、全体的には日本画特有の静けさが漂う風でありながら、植物の秘める生命力と躍動感のひしひしと伝わってくる画でした。

そして、その下画をもとに作られた七宝作品の数々……。
“有線七宝” というものを、今回初めて知り、初めて目にしたのですが、その品のある佇まいと、決して “主張” しているわけではないのに、作品から醸し出される存在感に圧倒されました。

細やかな絵柄、斬新な色づかい、そしてその絵柄の配置の美しさのみならず、地と絵とを区切る “輪郭線” 、さらに作品自体が持つ “輪郭線” の際立ち、その線の持つ力が、有線七宝ならではの、繊細で奥ゆかしい世界を生み出しているのだろうと思います。

直接手で描くのではなく、

金や銀の細いリボン状の金属線を貼付ける(植線)
→その線と線の間に釉薬を挿す
→焼成する
→研磨する
(これを繰り返す)

という一連の工程の中にある “制約” によって生まれる力、美しさ……。

 

今季の展示は12月14日までだそうで、もうあまり日がないのですが、毎年、春と秋に特別展が開催されているようなので、もしお近くに来られることがあれば、ぜひご覧になってみてください。

旧並河邸(並河靖之氏の工房兼住宅)がそのまま記念館となっていますので、展示作品だけでなく、旧窯場やお庭を含む私邸の一部も拝見することができます。

2014 14.54.45