夢か現か

今となっては夢だったのか現だったのかわからなくなってしまっていることがある。
幼いわたしは実家のリビングに一人いて、なぜかそこは真っ暗で、電気のスイッチは手の届く高さになく、 なんとかつけようとするのだけれどつけられない。 それで闇の中ひとりソファの上にじっと座っている…。
それが夢であったのか現であったのかははっきりとわからなくなっているのだけれど、 今から思えば、いずれにしてもそれが初めて「闇」を知ったときだったかもしれない、と思う。
今日自転車での帰り道に、久しぶりに哲学の道を通った。
銀閣寺周辺はまだ明かりがあるけれど、 南へ下るにつれて明かりもひとけも少なくなる。
あ~真っ暗だ…何も見えない、と思いながら自転車を走らせていると、
蛍が一匹…。二匹、三匹…。
それで思い出したのが、何年か前に見た蛍の乱舞。
確かあれは夜中の2時頃だったと思う。
辺り一面、何かのイルミネーションかと思うほど たくさん蛍が飛び交っていた。
あんなにたくさんの蛍を見たのは、これまでではあの時一回きり。
それは確かに目にした光景だったが、 もしかすると夢だったんじゃないかと思うことがある。
夢のようでもあり現のようでもあり…。
だけれども、それがどっちであったとしても きっとそんなことは、このような場合さほど大きな問題ではないのだ。
わたしにとってある種の経験は、 夢か現かという枠づけからはずれたものとして身体に刻み込まれていくような気がする。