なつかしい声、なつかしい味

お正月に、和歌山に住む父方の祖母の家に行くと
いつも作ってくれているものがある。
焼き芋。
食べるのによい形の、細長い焼き芋を人数分。
おやつに食べると、その美味しさにびっくりする。
何もつけなくても、焼かれたそのままの状態で、
さつまいも自体の持つ甘みが口の中いっぱいに広がる。
はじめは、一人一本は少し多いかなと思うのだけれど、
これが不思議にぺろりと食べられちゃうのだ。
さまざまに加工されたり調理されたりした “スイーツ” なるものが
たくさん存在する現代にあっては、
ある意味、最高に贅沢な食べ方のようにも感じる。
そういえば、実家の近所に住む母方の祖母も、
私が小学生のころ、おやつによく焼き芋を作ってくれていた。
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焼き芋と言えば、もう一つ思い出すことがある。
子どものころ、冬になるとよく聞いた声。
「いしや~きいもおお~~~」
子どもの頃はこの声が聞こえると外に出ていって、
おじさんから石焼き芋を買ったものだった。
あの、おじさんの低い声で、
半分歌っているかのような調子の “石焼き芋の声” が聞こえると、
どこかちょっと怖いような、どきどきするような、
そんな感じになったことを、今でもよく覚えている。
それでも、どきどきしながらおじさんの引く屋台に近づいていって、
ほくほくしたさつま芋をもらうのは、好きだったのだと思う。
今でも時々この声が聞こると、
思わず、ちょっと怖いような、どきどきするような、
そんな感じになる。