あの世からのことづて

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今日は、五山の送り火の日。
毎年、大文字山の「大」の字の送り火を眺めながらお盆の最終日を迎えます。
「大」の字に火が入れられて赤く燃えているのは15分くらいですが、
この真っ赤な火と、そこから立ち上る煙を見つめていると、
この立ち上る煙とともに、精霊たちが帰っていくように思われて、
心静かな気持ちになります。
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特にお盆だからと読み始めたわけではないのですが、
最近毎日少しずつ読んでいる本があります。
松谷みよ子さんの『あの世からのことづて』。
死にゆく者や死者と、現世で生きる者との交流のお話が全部で62篇、
収められています。
お話は創作ものではなく、実際に松谷さんが日本各地で聞き取った民話。
『いないいないばあ』などの絵本作家として有名な松谷みよ子さんが
このような民話の調査・研究もされているとは知らず、とても興味深く、
面白く読んでいます。
               *
あの世に住む者と、現世に住むわたしたち。
住むところは違っても、このように何らかの形で接触することがあるとしたら…。
とても不思議で、理性的に考えて理解できる類のものではないですが、
きっとどれだけ科学技術が発達したとしても、
そういう科学的なものの見方や考え方からは漏れ落ちていくような、
「わからなさ」というのはどこかで、いろいろな形で残っていくような気がします。
きっとそういう部分こそが、「人間」の面白いところであり、魅力であると思うから…。
松谷さんのこの本を読んでいると、
日本のあちらこちらにお盆の風習が残っているのも、
こういったことが「実際に」あったかなかったかは別としても、
それぞれの人に、それぞれの形で、そういった経験が「本当に」あるからこそ、
なのかもしれない、と思います。