有線七宝との出会い

季節は移り変わり、すっかり冬の空気に。
この秋、並河靖之七宝記念館に足を運びました。

地下鉄の駅まで歩く道の途中にある、京都の伝統的な町家建築。
「並河靖之七宝記念館」という看板……。
大きな通りから一本北に入ったところにあるので、あまり目立たないし、観光客の方がよくいらっしゃるという風でもなく、実にひっそりと建っているのですが、趣のある立派な建築だし、「七宝記念館」とあるし、ずっと気になる存在でした。

けれど、季節によっては閉館している時期もあり、気になりながらも、近所なのに(近所であるがゆえに?)なかなか行くことができていなかったのですが、それがようやく実現しました。

 

今季は、「並河七宝と下画」と題した特別展が催されていて、並河氏の手になる、すばらしい有線七宝の作品とともに、それらの下画を拝見することができました。

下画の中で最も強く惹かれ心に残ったのは、季節の草花の下画。
わたし自身、草花が好きだということもあるのですが、それぞれの季節の木や草花の特徴、佇まい、雰囲気が実によく捉えられていて、どこまでも細やかで繊細、全体的には日本画特有の静けさが漂う風でありながら、植物の秘める生命力と躍動感のひしひしと伝わってくる画でした。

そして、その下画をもとに作られた七宝作品の数々……。
“有線七宝” というものを、今回初めて知り、初めて目にしたのですが、その品のある佇まいと、決して “主張” しているわけではないのに、作品から醸し出される存在感に圧倒されました。

細やかな絵柄、斬新な色づかい、そしてその絵柄の配置の美しさのみならず、地と絵とを区切る “輪郭線” 、さらに作品自体が持つ “輪郭線” の際立ち、その線の持つ力が、有線七宝ならではの、繊細で奥ゆかしい世界を生み出しているのだろうと思います。

直接手で描くのではなく、

金や銀の細いリボン状の金属線を貼付ける(植線)
→その線と線の間に釉薬を挿す
→焼成する
→研磨する
(これを繰り返す)

という一連の工程の中にある “制約” によって生まれる力、美しさ……。

 

今季の展示は12月14日までだそうで、もうあまり日がないのですが、毎年、春と秋に特別展が開催されているようなので、もしお近くに来られることがあれば、ぜひご覧になってみてください。

旧並河邸(並河靖之氏の工房兼住宅)がそのまま記念館となっていますので、展示作品だけでなく、旧窯場やお庭を含む私邸の一部も拝見することができます。

2014 14.54.45